一部の『万葉集』歌はさておき、恋歌の恋は、必ず挫折するものとして演じられる。見逃しがたいのは、その演じる過程の中に人生の憧れやら欲望やら挫折感やらが吸収されている、ということである。
(渡部泰明『和歌とは何か』岩波新書2009年166頁) ※「一部の『万葉集』歌」を探さねば。
「こひ」「こふ」とはどういうものか。それは離ればなれである恋人同士が、互いの魂をよびあうことでした。
古代では、魂は浮遊するものと考えられていました。魂の結合こそが、恋の成就(じょうじゅ)でしたが、それがなかなか実現しないので、古代の「こひ」とはつらいものでした。逢(あ)いたくても逢えない切なさ、それが「こひ」だったのです。 『万葉集』にも、恋の歓(よろこ)びをうたったものは一首もありません。今、目の前にいない相手を想い慕う、そういった互いの求める気持ちこそがうたわれます。 (中西進(なかにし・すすむ)『ひらがなでよめばわかる日本語』新潮文庫2008年142~143頁) ※なるほど。
「逢ふ」とは、もちろん対面しただけではなく、男女が夜をともにすることである。実は「逢ふ恋」だけでもけっこう詠みにくい。褥(しとね)を共にすることそのものは生々しすぎるし、逢えた喜びも表現しにくい。歌の世界では、恋とは逢えないもの、思いがかなえられないもの、とするのが普通なのだ。恋歌の中の恋は、いつも失恋でなければならない。
(渡部泰明(わたなべ・やすあき)『和歌とは何か』岩波新書2009年90頁) ※逢えた時には、歌など詠んでいられますか、ということかな?
46道の後(しり) 古波陀嬢子(こはだ)を 雷(かみ)の如(ごと) 聞えしかども 相枕(あひまくら)まく
47道の後 古波陀嬢子は 争はず 寝しくをしぞも 愛(うるは)しみ思(おも)ふ (『古事記』中巻「応神天皇記」日本古典文学全集『古事記 上代歌謡』、小学館1973年253頁) (
和歌(江戸時代までの五七五七七)の世界では、「失恋」の歌は、数え切れないほどあります。でも、「得恋」の歌は、数えるほどしかありません。数年前から、拾い出そうとしています。
![]() 雀 (08/02/29 撮影) < 前のページ次のページ >
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